後立山北部 丸山(2768m)、 杓子岳(2812m)、旭岳(2867m)、白馬岳 (2932m) 2010年9月4〜5日

所要時間
9/4 4:50 猿倉−−5:51 白馬尻−−6:14 雪渓に乗る−−6:51 雪渓を離れる−−7:40 避難小屋−−8:14 村営小屋 9:18 −−9:25 丸山−−10:02 杓子岳 11:05−−11:49 丸山−−11:55 村営小屋 12:00−−12:03 県境稜線 12:40−−13:07 旭岳 14:08−−14:30 県境稜線 14:52−−14:54 村営小屋(幕営)

9/5 4:40 村営小屋−5:08 白馬岳 5:57−−6:10 村営小屋 6:43−−7:01 避難小屋−−7:26 雪渓に乗る−−7:42 雪渓を離れる−−7:56 白馬尻−−8:39 猿倉

概要
 猿倉から大雪渓を登り村営小屋で幕営。初日は杓子岳と旭岳に登り、翌朝に白馬岳に登った。この週末は大気の状態が大変安定し、午後になってもほとんどガスが上がってこなかったほど。翌朝も快晴で北ア、南ア、中ア、八ヶ岳、白山等、どこも雲はかかっていなかった。東側の雲海の高さも今までの中で最も低く、日の出直後までは奥日光まではっきりと見えた。八ヶ岳、南アルプスは霞がかかっていたが、東方面の視界がこれほどいい日は滅多に無いと思われる。下りも大雪渓経由。

地図クリックで等倍表示



 本当に今年は暑い。9月に入っても例年の8月上旬並み、いや、それ以上の気温で記録的異常高温の年だ。下界では夜間でもクーラーを切ることができず電気代がもったいないだけでなくCO2を大量に排出してさらに温暖化してしまう。こんなときこそ高山で涼みたいところだ。今回はテントを背負って天上界で涼しい一夜を過ごすことにして、さらに雪渓で涼める白馬岳とした。これは先週の白馬鑓でガスって何も見えなかったリベンジでもある。今回は幕営するのでガスが上がってくる前、日の出の時刻に山頂に立てるので展望を楽しめる確率は高いはずだ。

 暑い東京を出発、この時期は高速道で土曜日0時の時間待ちをするには余りにも暑すぎるため金はかかるが金曜夜のうちに高速を出て猿倉に向かい、涼しい猿倉で寝ることにする。もちろん、ここで睡眠時間を稼いで明日は万全の体調で登る意味もある。駐車場は先週と同程度でまだ空きがあり、日中に日影になる場所を確保できた。

 今回の天気予報では背の高い高気圧に覆われて土曜日は山間部でもほとんど雨の心配は無いとのことで、久しぶりにフライは持っていかないことにした。気温は下界ではヘタをすると今年最高となりそうで、9月だというのに稜線の夜間でもさほど冷え込みは無いと考えて真夏装備で行くことにした。私の場合、1泊では70リットルのザックを使うが夏装備だと結構スカスカでザックの重さがもったいないと感じていた。しかしその下のサイズのザックは40リットル+αで幕営装備では小さすぎる。でも雨の心配が無いのならザックの側面にでも荷物をつけても大丈夫なはずで、今回は細長い筒状の入れ物に衣類を詰め込んでザック側面に配置、反対側の側面はロールマットで、これだけ外に出すと40リットルでも充分お釣りがきた。冬装備では無理だが秋口まではこれで行けそうだ。

猿倉荘横の登山口 林道途中から見た白馬岳
林道終点 白馬尻小屋
白馬尻小屋前から見た大雪渓末端 大雪渓末端ではまだ雪渓に乗らず右岸を登る
右岸の「秋道」を登る まだ右岸を歩く

 翌朝、朝飯を食ってまだ暗い時刻に出発、まだやっと明るくなり始めた時刻で歩きだす人はほとんど見えない。猿倉荘を通過して林道をトボトボ歩き最初の沢で顔を洗う。林道終点には2台の車が止まっていた。白馬尻が近づくと先行者の姿が見えるようになり、私は小屋には立ち寄らずにそのまま先に進む。小屋の前の広場では雪渓から吹き降りる冷たい風が気持ちよかった。少し上部でガスに突入するが、これは雲海の雲のはずなので天気の心配は無い。

ここで雪渓に乗る。風が冷たい! ガスの中、雪渓を登る

 もう9月なのでケルンでは雪渓に乗らず、雪渓を右手に見ながら右岸の夏道を登っていく。目印が豊富だし踏跡もしっかりしているのでルートミスの心配は無い。やがて夏道は雪渓脇に到着、ここからお楽しみの雪渓歩きだ。吹き降りる風は涼しいを通り越して寒いくらいで温度計は一気に10℃まで下がった。長袖を着たい気分だが歩き出せば体が温まるので腕カバーだけ使用する。6本歯のアイゼンを装着して出発。先着の登山者はアイゼンの装着に手間取っていたが、こちらはあっという間である。

雲海を突き抜ける 上空は大快晴! 秋の空の色

 早朝は固く締まった雪、というか半分氷で、アイゼンが気持ちよく効く。スプーンカット化が進んで歩きにくいが石ゴロゴロの河原歩きよりは格段にいい。ガスって先の様子が見えないが、とにかく上を目指して歩けばいいので細かいルートは気にせずガンガン標高を上げていく。雪渓歩きは夏道歩きとは違うし傾斜もきついので他の登山者を次々とごぼう抜き状態だった。やがて雲海の層を抜けたらしくガスが薄まって一気に青空が広がった。夏の空というより秋の空のような青の深さで、言葉で表現するのは難しいくらいの美しい空だった。

下界は雲海の下 この先で左岸の「秋道」に乗る
左岸の「秋道」取り付き 左岸の「秋道」
「夏道」の雪渓を離れる付近は巨大クレバスがあった まだ夏道よりも下
この沢を横断すると夏道に合流 岩室跡

 標高が上がると風が雪渓上を通過する距離が減る影響か、風の冷たさが徐々に失われてくる。そして雪渓はまだ続くが雪渓上にロープが張られ、これ以上直進しないよう目印が付けられ、左岸の夏道(正確には「秋道」か?)へと導かれる。ここでアイゼンを脱いで左岸沿いの夏道歩きだ。最初は傾斜は緩やかで、雪渓末端付近で高巻きしつつ支流の沢を横断する。この辺には落石注意の文字があちこちに見られた。沢を横断すると7月頃に歩いた「夏道」とは少し離れたルートで左岸を登り、やがて「夏道」と合流、以降は何度か歩いた道だ。この付近は傾斜が一番きつく苦しい登りだ。巨岩に岩室跡の標識があったが今は資材置場と化していた

杓子岳方面
結構な傾斜をグングン登る。雪がある時期はちょっとビビる傾斜
大雪渓を見下ろす 「緊急」避難小屋

 傾斜が緩むと避難小屋が登場、でも常時開放されているわけではなく「緊急」避難小屋らしい。これより上部は草付きが中心となり夏場はお花畑だが既に花の時期は終わっていた。ここが紅葉するのも1,2週間後だろうか。もう県境稜線が見えるが、そこを歩く人の姿まではっきりと見ることができる。この上天気だから立山、劒岳方面もいい展望だろうなぁ。

もう県境稜線が近い。歩く登山者の姿も見えた
杓子岳が徐々に目の高さに近づく
村営宿舎は近い 宿舎前の雪渓雪解け水場

 とうとう視界の範囲内で登りの人は全て追い越し、あとは村営小屋までの間は下ってくる人はいても登りの人の姿は見えなくなった。マジで先頭に出たようだ。小屋到着前に小屋前の雪渓末端の水場を見てみると、前回来た時にはロープが張ってあって入れなくなっていたが今回は入れるようになっていた。ただしこの時期の雪解け水が直接流れているので濁りがあるのはしょうがない。それでも手が千切れそうに冷たい水で顔を洗ってしゃきっとできた。

村営宿舎目の自販機。初めての北アではカルチャーショックを受けた テント場。先客は1張のみ。人物は小屋従業員

 幕営の手続きをしようと小屋に向かい、テント手続き用のドアから入ろうとしたらドアが開かない! よ〜く見るとガラスには「営業は10時から」との張り紙が。宿泊者が出発し、今日のお客が来るまでの短い時間がスタッフの貴重な休憩時間なのだろう。金を払うのはいつでもいいのでまた後で来ることにしてテント場に向かう。そうそう、小屋の前にある自販機、これは10年以上前から存在している。私が北アに登り始めたばかりの頃、蓮華温泉から遠見尾根まで縦走したが、この自販機を目撃してカルチャーショックを受けたものだ。それまでは南アの主要な山は登っていたが、車が入れない山小屋に自販機など置いてあるのは見たことがなかった。冷えたビールがいつでも買えるのは何とも贅沢だ。北アのカルチャーショックといえば、同じ山行の唐松小屋にて個室なんてものがあるのを見て驚いたものだ。これも南アでは見たことがない(というか私は小屋泊まりしないけど)。さすが北アは何でもありだと感心しきりだった。

 テント場は昨日から張ってあると思われる1張りだけでまだガラガラ、適当に場所を物色し荷物を置く。小屋のスタッフが岩を背負ってどこかに運んでいたが何に使うのだろうか? ガスが出る前に展望を楽しんでおこうと空身で稜線に向かった。

県境稜線から見た白馬岳 こちらは丸山
丸山山頂 丸山から見た中背山
丸山から見た360度パノラマ写真(クリックで拡大)
丸山から見た立山、劒岳、北方稜線(クリックで拡大)
丸山から見た北ア南部(クリックで拡大)
丸山から見た黒部別山、仙人山、坊主山(クリックで拡大)

 稜線に出ると立山剣は雲がかかること無くすっきりと見えていた。どうせ写真を撮るなら丸山からがいいだろうと小ピークに登る。標高が主稜線の中でも低いので北ア南部は鑓ヶ岳に隠れて見えないが、それでも槍ヶ岳の尖った山頂が見えていた。東方面は背の高い雲海で、今回も奥日光は見えなかった。明日の朝に期待しよう。

 テント場に戻ってテントを張っているとスタッフの一人が寄ってきて営業は10時からなので、それ以降に手続きをお願いしますとのこと。飲料水は小屋横の黄色いタンクで、前回と同じだった。風が強くなることがあるので気をつけて下さいとも言われたが、それは承知のことなので言われる前から四方の張綱もしっかりと張っておいた。このテント場は周囲に大きな石がごろごろしているので重石に事欠かない。

 テントの設営も終わり、本日のやるべきことはおしまいだがまだ時刻が早すぎる。白馬岳は明日朝登るので今日はいいとして、先週は鑓ヶ岳は登ったので白馬三山のうち杓子岳が残るのでまずはそこに行こう。それでも時間が余るのは確実なのでその後は旭岳でも行くか。

丸山を越えて杓子岳へ向かう
県境稜線から登山道を見下ろす
ブナクラ峠の向こうに白山が見えた 大雪渓を登る人の列
最低鞍部へと下る 最低鞍部から大雪渓方面。下れそうな斜度

 再び丸山を通過、最低鞍部に向けて一気に下っていく。稜線から大雪渓へと続く谷筋を見下ろすと結構な傾斜で、そこに一筋の登山道が伸びているのが見える。そして点々と登ってくる登山者の姿。最低鞍部からは残雪期なら直接谷に下れそうな傾斜に見えた。数年前にここを通った時には雪壁のように見えたものだが。まあ、雪庇の有無で印象は大きく変わるだろうが。次の残雪期に来るときには直接鞍部を目指してみるのも面白そうだ。鞍部でも森林限界を余裕で越えているので草付きや寝たハイマツで展望はすこぶるいい。

旭岳と清水尾根(クリックで拡大)
中背山 直登コース分岐が近づく
直登コースに入る。標識無し 稜線までの登山道が良く見える
白馬岳方面を振り返る。まだ全然ガスが上がっていない

 鞍部から登りにかかり、明瞭な縦走路が杓子岳西斜面を巻き始めるところで薄いが尾根を直登する道が分岐、案内標識が無く地図を見ない人だと杓子岳をカットしてしまいそうだ。石が積み重なった尾根で登山道以外では足元が崩れて歩きにくそうだ。北側は大きく崩壊し、そこを涼しい風が吹きあがってくる。

山頂標識が見えてきた 杓子岳山頂
杓子岳から見た白馬岳 杓子岳から見た登山者の列
杓子岳から見た南側。白馬鑓ヶ岳がデカ過ぎて北ア核心部が見えない
杓子岳から見た後立山南部と北アルプス(クリックで拡大)
杓子岳から見た北側の展望(クリックで拡大)
杓子岳から見た北信の山(クリックで拡大)
杓子岳から見た群馬西方の山(クリックで拡大)
杓子岳から見た南アルプス(クリックで拡大)

 砂利の尾根を登り切ると南北に細長い山頂部北端に到着、その北端に山頂標識が立っていた。山頂付近は岩稜帯で展望を邪魔するものは無いが、目の前の鑓ヶ岳がデカ過ぎて南側の展望はイマイチだ。それでも南アは聖岳付近まで肉眼で確認でき、写真判定では加加森山まで写っていた。残念ながらやっぱり奥日光方面は雲の中だった。時間はたっぷりあるので山頂でしばし休憩する。東尾根は恐竜の背中のような尖った岩の連続で、両側とも崩壊してかなりヤバそうだが、目の前の岩にはフィックスロープがグルグル巻きになっており、ここを支点に使ったパーティーがいたようだ。当然ながら雪が付いた時期のものだろう。

最低鞍部から登り返す 丸山への最後の登り
テント場にいったん戻る 県境稜線から見た旭岳

 テント場に戻って水を補給、ラジオでお昼のニュースを聴くために稜線に上がって展望を楽しみながらくつろぐ。今日も季節外れの記録的猛暑で、名古屋や岐阜の予想最高気温が38℃とのこと。なお、この日の最高気温は宇治田原市の39.9℃(もしかしたら2010年の国内最高気温になるかも)だった。こんな暑い中でも続々と登山者が登ってきては白馬山荘へと歩いていく。まあ、ここまで上がれば気温は20℃前後で下界と比較すれば天国だが。

 稜線で休んでいると、同様に休憩中のオバサン(私ももう立派なオジサンの年代だが)が旭岳の方を見ながら話し合っていて、どうも仲間の1人が旭岳を登っているらしい。よ〜く見ると旭岳の稜線上を動いている小さな物体が確認できた。私の他にも登る人がいても不思議ではないが、実際に目撃したのは初めてだった。無事山頂を往復して戻ってきたのは老人の男性で、3人で白馬山荘へ上がっていった。それに合わせてこちらが旭岳に向かった。

鞍部南側に降り、雪田脇を登って祖母谷方面縦走路へ ここで縦走路と離れて稜線上の踏跡を行く
鞍部から県境稜線方面を振り返る

 鞍部付近の雪田東側を適当に通過して鞍部に至り祖母谷温泉への縦走路に乗る。西に進むと旭岳の稜線が落ちてくる個所にロープが張ってあり、その先に踏跡がジグザグに上がっているのは前回と変わらない(あ、前回はロープはなかった)。踏跡の濃さは前回と変わらず程度だろう。ロープは立入禁止の意味ではなく、祖母谷温泉を目指す人が間違って入らないようにするのが目的だろう。何も案内看板等は無かった。

ガラガラの斜面が終わり歩きやすくなる ハイマツを迂回する踏跡
もうすぐ南端の肩

 このルートは既に2回歩いているので様子は分かっている。エアリアマップに道の記載は無いが、実際は尾根上に明瞭な踏跡が山頂まで続いている。正式な登山道ではないため利用者は少なく部分的に薄い部分はあるが、森林限界を超えて藪は無く下部はガレた岩屑が重なった斜面で標高を上げるとハイマツが混じって足元が安定した斜面に変わる。この稜線は一面がハイマツに覆われているわけではなく、ぽつぽつとハイマツの島があるだけなので歩く支障にはならない。もちろん踏跡はハイマツを避けて付けられている。

南端の肩から山頂を見る 旭岳山頂
旭岳から見た白馬岳
旭岳から見た清水岳と猫ノ踊場に続く尾根
旭岳から見た北アルプス(クリックで拡大)
旭岳から見た北ア核心部と立山、劒岳(クリックで拡大)
旭岳から見た南側の展望(クリックで拡大)
旭岳から見た白馬鑓と中背山に続く尾根

 登り切ると小ピークに出るがまだここは山頂ではなく南の肩で、真の山頂は北側のピークである。南の肩と標高的に差があるようには見えないが地形図上では北側ピークに標高点表示がある。両者をつなぐ稜線上にも明瞭な踏跡があり、岩の部分は道は西側を巻いている。水平移動して東に顕著な巨岩があるピークに到着すると手製の山頂標識が待っていた。前回あったか記憶にない。当然ながら展望は良好。時間はたっぷり余っているので無人の山頂でしばしお昼寝。しかし午後でもガスが上がってこず直射日光がジリジリと照りつけ暑い。持ってきた傘を開いて上半身だけ日影に入った。

下る 鞍部に人の姿が
6人パーティーが登ってきてビックリ 県境稜線に登り返す
県境稜線到着 まもなく旭岳山頂へ到着するパーティー

 やがて西側からガスが上がってきたが旭岳山頂ではなくその南側を流れ、日差しを遮ることは無い。しかし村営宿舎付近は日影に入っておりそっちの方が涼しく過ごせそうなので、まだ時間は早いがテントに戻ることにする。登りと同じルートを下っていると鞍部付近を祖母谷方面に進んでいるパーティーが視界に入った。まだ遠いので詳細は見えないが大ザックを背負っているように見えないし、時刻的にもこれから祖母谷に下れるわけはないし、不帰岳避難小屋まででも夕方近くになるだろうから縦走組とは思えなかった。だからと言って5,6人もが旭岳に登りに来るとも思えない。時間が余って雪田付近でも散策しに来たのかと思いきや、意外にも縦走路を離れてこちらに登ってきた。旭岳山頂に人の姿(私だ)を見て登れるのだったら行こうということになって登りに来たという。山頂まで踏跡があること、本当の山頂は登り切ったピークではなくその奥のピークであることを伝えておいた。県境稜線に戻って旭岳南の肩から山頂をつなぐ稜線を見るとパティーが歩いているのが見えた。

テント場に戻る。まだ少ないがテント増殖中。 夕暮れの白馬岳
夕暮れの丸山 日没。たぶん能登半島のはずだが雲で隠れていた
日没の劒岳と北方稜線(クリックで拡大)

 テントに戻ればやることもなく、ラジオを聴きながらまたもや昼寝。いったん出たガスもそのうち消えてしまい暑くなったので、テントから這い出して風が吹き抜ける稜線に上がる。午後のいい時間だがまだまだ登ってくる人が多い。くぼ地になったテント場に直射日光が当たらないような角度まで太陽が下がってからテントに戻り、ラジオを聴きながら時間をつぶして夕暮れ時から一人宴会開始。日没の時刻が近づくと稜線に上がって写真撮影。たぶん今の時期は太陽は能登半島に沈むと思うが下界は雲海に覆われていた。上空は快晴、積乱雲は見られず今夜はにわか雨の心配はなさそうだ。明日の朝から快晴を期待していいだろう。

 例年の今頃の時期ならば標高2700mもあれば最低気温は1桁まで下がって当然だが、この日の最低気温は10℃ほどでダウンジャケットを着て寝ると少し暑いくらいだった。まあ、下界の死にそうな暑さを考えると天国だが。

まだ暗い中出発。白馬山荘の明かりが見える 日の出前に白馬岳山頂に到着

 翌朝、山頂で日の出を迎えるべく4時前に起床、テントの外に顔を出すと満天の星空が広がっていた。さて、あとは雲海で遠くの山が隠れていないかが心配どころだ。今の日の出の時刻は5:15くらいで、山頂まで標高差200mなので所要時間30分なので4:45に出発すれば日の出に間に合う。まだかなり暗くヘッドランプが必要な時間だが東の空は明るくなり始めていた。稜線に上がると白馬山荘の窓の明かりが輝いていた。既に山頂に向けて明かりが動いているのが見える。今朝の白馬岳は大賑わいになりそうだ。ま、広い山頂なので問題ないけど。賑わう山荘を通過する頃にはライト無しで歩けるようになり、先行の男性の後ろを付いていく。山頂に到着する頃にはすっかり明るくなったがまだ日の出には至っていなかった。予想通り山頂はたくさんの人が日の出を待ちわびていた。

白馬岳から見た後立山南方と北アルプス 富山平野に延びる「影白馬」
白馬岳から見た日の出直後の後立山〜剣岳(クリックで拡大)
白馬岳から見た後立山〜剣岳(クリックで拡大)
白馬岳から見た東側(クリックで拡大) 雲海が広くてパノラマ合成がうまくいっていない
白馬岳から見た越後中越〜栃木西部の山(クリックで拡大)
白馬岳から見た後立山北端〜北信の山
白馬岳から見た黒負山周辺
白馬岳から見た清水岳〜猫ノ踊場
白馬岳から見た劒岳北方稜線

 こちらは展望が楽しめればいいので山頂標識から少し南側に離れた稜線で景色を楽しむ。北アルプスの山々には全く雲がかかっておらず、どの山でも大展望だ。南アルプスは昨日の日中よりも霞んでしまっているが、何とか赤石岳までは確認できた(ただしあまりにコントラストが薄くて自動パノラマ合成ソフトが合成を拒否した)。八ヶ岳も同様で、そのすぐ右側にある富士山はもっと微かに見える程度だ。もう少し風があった方が空気の透明度がいいのかもしれない。南アは北アから何度も見ているので見えなくてもいいのだが、問題は奥日光だ。ここは毎度雲海に邪魔されて見えないことばかりで、アルプス級の山で見えたことがあるのは北岳と八ヶ岳だけしかない。後立山は連敗中だった。しかし今日は幸運だった。志賀高原、岩菅山の左側に明らかに日光白根と思える形状の顕著なピークがあり、その右側には男体山らしきピークも。左側には絶対に燧ヶ岳に間違い無いといいきれるような形状をしたピーク。これは本当に燧ヶ岳だった(日の出は燧ヶ岳付近からだった)。もっと左には微かに見覚えのある大きな2つのピークがあり、たぶん越後三山のどれかではないかと予想したがこれも当たっていた。栃木県の山では台倉高山や皇海山、袈裟丸山まで見えたのは収穫だった。錫ヶ岳もかなり高いがあの山頂は樹林だからあちらからはアルプスを見ることはできない。今朝の日光白根からだったら北アルプス全体を見ることができているだろう。

白馬岳から見た入善付近。肉眼では海岸線が見えた 白馬岳を下り始める
白馬山荘 テント場も撤収作業真っ盛り

 展望に大満足して6時前に下山開始。テント場に到着して日向にテントを置いて虫干ししつつのんびりパッキング。周囲にまだいる幕営組も私と同様に大雪渓経由の下りだろうか。テントが乾いてザックに突っ込んで暑い下界を目指す。

県境稜線を後に下る 杓子岳北面の崩壊地
大雪渓が見えてきた。登りの人が現れ始める 落石注意の谷を横断
「秋道」を下る ここで雪渓に乗る

 こちらはテント撤収に時間がかかったので小屋を出発して下山している人はかなり先行しているだろう、下山している人の姿はほんの僅かだった。ところが行っても行っても数人追い越しただけであとは登ってくる人ばかりだった。よくよく考えると、通常の1泊コースは初日に大雪渓を登って2日目は杓子、鑓ヶ岳を越えて鑓温泉経由で下山する周遊コースかもしれない。これだけ天気がいいのだから白馬岳のみではなく白馬三山縦走の方が楽しめるのは間違いない。

相変わらず涼しい風が吹き下りる大雪渓 残念ながらここで雪渓を離れる
右岸の「秋道」を下る 白馬尻小屋
林道から白馬岳を振り返る 砂防ダムの滝
猿倉荘 登山者用駐車場

 雪渓に乗るところでアイゼンを装着、まだ気温が低くて締まって滑りやすい時間帯なので、下りはノーアイゼンではかなりスピードが落ちるだろうが、6本爪ならガツガツと下っていける。大雪渓を登ってくる登山者が次々と現れるが、皆苦しそうだ。でもここは涼しくて天国だよ〜。登りの半分の時間で雪渓下りが終わって再び土の上を歩く。やっぱり地面の上は気温が高い。白馬尻小屋前の広場は沢に面した先端まで行くと雪渓を吹き降りてきた冷たい風を感じることができて生き返った。林道に出て最後の沢で濡れタオルで体中の汗を拭った。やっぱ水浴び最高! 猿倉が近づくと登ってくる人の姿は減って猿倉荘は静かだった。

 

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